本コラムでは、当事務所のウェブサイトを訪れてくださった皆さんに、日本に関する多様なトピックをお届けしたいと考えています。初回の本稿では、日本の雇用体系や働き方の変容について、全体像を見渡してみたいと思います。
皆さんは、「日本の会社員」というとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?ひと昔前までは、「終身雇用」や「年功序列」を軸とした雇用体系が「日本型雇用」と呼ばれ、大企業を中心に普及していました。これは戦後の高度経済成長期(1950~60年代)に形成され、企業は新卒者を一括採用し、定年まで長期雇用することを前提としていました。この枠組みは、労働慣行にも影響を及ぼしました。昇進や処遇が勤続年数や忠誠心に左右されやすく、社員は仕事に心血を注ぐことが当然とされたのです。その結果、長時間労働が常態化し、有給休暇の取得率も長年50%程と低水準にとどまっていました。
しかし、その雇用体系も、1990年代のバブル崩壊を機に変革を迎えます。経営状態が悪化した企業では、人員削減等のリストラが行われました。さらに規制緩和によって派遣労働等の非正規雇用も拡大しました。同時期には、勤続年数や年齢ではなく仕事の成果を昇進や昇給の評価基準とする「成果主義」の導入を試みる企業もみられるようになります。このように、終身雇用や年功序列を軸とする日本型雇用は、少しずつその土台が崩れていくことになります。
そして、社会の進展とともに、労働市場はさらなる課題に直面します。少子高齢化により、労働人口の減少が顕著になってきました。労働者の長時間労働・有給取得率の低さ、正規・非正規労働者の待遇格差なども問題となり、政府は2010年代半ばから「働き方改革」と呼ばれる法制度改革の検討に本格的に着手しました。2018年には関連法が成立し、翌19年から順次施行されています。関連法には長時間労働の是正、有給休暇の取得義務、同一労働同一賃金といった従来からの課題の改善に加え、テレワークや副業・兼業をはじめとする多様な働き方の推進も含まれ、幅広い改革が行われました。
2019年には某大企業の経営者が「終身雇用の維持は難しい」と公言し、日本型雇用が揺らいでいることはより広く意識されるようになりました。もっとも日本型雇用の仕組みが完全に消え去ったわけではなく、いまも多くの企業でその要素は残っています。ただ、この数十年でそれが「社会の主流」とは言いがたい状況になってきたのも事実でしょう。
中途採用や、職務内容を明確に定義する「ジョブ型採用」の広がりに代表されるように、使用者側の意識も「新卒者を雇って一生面倒を見る」から「必要な人材を柔軟に登用する」へと変わり、労働者側の意識も「一社に一生を捧げる」より「自分のスキルを磨き、キャリアを重ねる」方向へと広がっています。副業やフリーランス、ギグワークといった多様な働き方も以前より普及しています。
こうして日本の働き方は多様化してきましたが、従来の雇用慣行や、それに由来する課題も依然として残っています。こうした変化と課題の両面を踏まえながら、これからのコラムでは、日本の働き方についても、皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
























