『パワーハラスメント防止準則』草案(以下「パワハラ防止準則」)第23条、第24条は、申立手続の競合及び新旧法令の適用について特別な規定を設けています。
一、パワハラ防止準則第23条は、「パワハラ申立事案が職場におけるセクシュアルハラスメントの法規に関わる場合、雇用主の調査、処理手続は本準則に矛盾しない範囲において、併合して処理すことができる。」と規定されています。
- 従業員数が30人以上の雇用主は、パワハラ又はセクハラを問わず、いずれも申立処理単位を設置する必要があります。ただし、その構成員数、性別割合については異なる規定が設けられています。職場におけるセクハラ防止措置準則(以下「セクハラ防止準則」)第12条第2項は、「その構成員にはジェンダー意識を有する専門家を含めなければならず、かつ女性構成員の割合は2分の1を下回ってはならない」(最低構成員数の規定は設けられていません)と定めているのに対し、「パワハラ防止準則」第7条第5項は、「構成員は少なくとも3名以上とし、かついずれの性別の割合も3分之1を下回ってはならない」と規定されています。
- 従業員数が100名以上の雇用主は、パワハラ又はセクハラを問わず、いずれも調査チームを設置して申立調査を行う必要があります。ただし、設置期限、構成員の人数及び性別割合は異なる規定が設けられています。
(1) 設置期限について、パワハラ防止準則第10条第2項は、「申立を受理した日から7日以内に調査チームを設置しなければならない」と規定されているのに対し、セクハラ防止準則においては調査チームの設置期限に関する明文規定は設けられていません。
(2) 構成員総数及び性別割合について、パワハラ防止準則第10条第3項は、「少なくとも3名以上とし、外部の専門家が2分の1以上を占めなければならない。いずれの性別の割合も3分の1を下回ってはならない」と規定されています。これに対し、セクハラ防止準則第13条第2項は、「申立調査チームを設置してこれを調査しなければならない。その構成員には、ジェンダー意識を有する外部専門家を含めなければならない」とのみ規定されており、調査チームの構成員の最低人数及び性別割合に関する明文の規定は設けられていません。
(3) また、留意すべき点として、パワハラ防止準則、セクハラ防止準則のいずれにおいても、一般の従業員及び申立事案を処理する従業員は教育訓練を受講しなければならないと規定されています(パワハラ防止準則第6条、セクハラ防止準則第9条)。しかし、パワハラ防止準則第10条第4項は、「事業単位の調査チームの構成員は、パワハラの防止に関する教育訓練を少なくとも3時間以上受講しなければならない」と時間を明記しているのに対し、セクハラ防止準則第9条第2項第1号では、申立、調査及び処理に携わる者を優先的に教育訓練を実施すべき対象とすることのみ規定しており、教育訓練の時間数に関する明文の規定は設けられていません。
二、パワハラ防止準則第24条は、「本準則の施行前に受理された職場における不法な侵害事案のうち、パワハラ申立事案に該当するもののまだ完結していない場合、及び施行前に発生したパワハラ事案であって施行後に申立が受理された場合については、いずれも施行後の規定に基づき完結させるものとする。ただし、既に進められた手続については、その効力を妨げられない。」と規定されています。
企業は申立処理単位、調査チームを設置する際、上述のセクハラ防止準則、パワハラ防止準則の関連規定も同時に合致できれば、同一当事者間のパワハラ申立、セクハラ申立事案を異なる申立処理単位又は調査チームに調査、処理を委ねる必要がなくなります。これにより、手続の複雑化といった煩雑な事態を未然に回避することが可能となります。
※注意事項:本稿で言及した職安法及び関連する下位法令草案(パワハラ防止準則草案)は、いずれも現時点では未施行です(主務官庁は2026年7月1日からの施行を予定しています)。読者の皆様におかれましては、最新の法令の動向に引き続きご注意ください。















