日本における民泊の三つの制度
日本では、ホテルや旅館と並ぶ宿泊先の選択肢の一つとして、「民泊」が広く利用されるようになっています。「民泊」とは一般的に、住宅の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指します。
民泊は、訪日外国人旅行者の増加やオンライン予約サービスの広がりなどを背景に2010年代に急速に広がり、政府も法整備を進めました。2025年の訪日外国人旅行者数は約4,268万人と過去最多となり、宿泊需要とともに民泊施設も増加しています。
日本で「民泊」を適法に営むための制度は、大きく三つに分けることができます。
第一は、旅館業法に基づく「簡易宿所」で、自治体の許可が必要ですが、営業日数に上限はありません。
第二は、国家戦略特別区域法に基づくいわゆる「特区民泊」です。これは、国家戦略特別区域内の一部の地域で、自治体から認定を受けて行うものです。こちらも通年の営業が可能ですが、宿泊者には一定の最低滞在日数が定められています。
第三は住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)に基づく民泊で、自治体への届出により営業することができますが、人を宿泊させる日数は、年間180日以内に制限されています。また、自治体は条例により、営業を制限する区域や期間を定め、営業日数をさらに制限することもできます。
自治体の規制強化と「ゼロ日規制」の見直し
一方、民泊の普及に伴い、住宅地やマンションなどでは、騒音やごみ出し、共用部分の利用などをめぐる近隣住民とのトラブルが問題となっています。こうした問題を背景に、近年、住民の生活環境を守る観点から規制強化の動きが進んでいます。
特区民泊では、大阪市は2026年5月29日をもって特区民泊の新規受付を終了しました。これは既存の特区民泊を直ちに廃止するものではありませんが、全国の特区民泊施設の9割以上が大阪市に集中していることから、特区民泊への新規参入に与える影響は大きいとみられます。また、大阪府内の他の自治体でも同様の動きが広がっています。
民泊新法に基づく施設についても、自治体が条例による規制を強化する動きが進んでいます。こうした中、2026年7月15日、観光庁等は地方自治体に対し、民泊新法に基づく届出住宅の規制に関する新たな技術的助言を発出しました。注目されるのは、いわゆる「ゼロ日規制」(特定の区域において、民泊を営業できる日を年間0日とすることで、事実上その区域での民泊営業を禁止すること)に対する国の考え方が転換された点です。従来のガイドラインでは、ゼロ日規制は『適切ではない』とされていました。今回の通知では、民泊の増加により住民の生活環境等への影響が懸念される場合には、条例により新たな民泊を禁止するなどの「ゼロ日規制」を行うことができるほか、一定の場合には既存の民泊も規制できることが明確にされました。
このように、日本の民泊政策は、インバウンドの拡大に伴う宿泊需要への対応を図りつつ、地域住民の生活環境との調和をより重視する段階に入っています。今後、日本で民泊事業への参入を検討する際には、全国一律の法律だけでなく、各自治体の条例や規制の動向を確認することが、これまで以上に重要になるでしょう。
(参考)
民泊制度ポータルサイト「minpaku」(2026年9月27日取得,https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/index.html)
観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について (技術的助言)」(2026年9月27日取得,https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002011734.pdf)

















