高まる対内直接投資審査への関心
日本では近年、経済安全保障の観点から、外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます)に基づく対内直接投資審査の実効性向上が大きな政策課題になっています。
最近注目を集めたのは、2025年の台湾の電子部品大手による日本の半導体・電子部品企業へのTOB(株式公開買付け)に関する審査です。最終的に承認されたものの7か月もの審査期間を要し、議論を巻き起こしました。さらに2026年4月には、アジア系投資ファンドによる工作機械産業の日本企業の買収計画に対し、外為法に基づく中止勧告が出されました。
こうした動きと並行して、2026年4月末現在、国会では対内直接投資審査の実効性強化に関する外為法改正案が審議されており、国内外の注目は一段と高まっています。そこで本稿では、外為法に基づく対内直接投資審査制度の基本構造を概説します。
制度の概要と事前届出の要件
外為法は、健全な投資の促進と国の安全等に係る技術流出の防止を目的として、外国投資家が日本企業に対して⼀定の投資を行う場合に事前届出を求め、審査を行うこととしています。
具体的には、①外国投資家が、②国の安全等の観点から指定された業種(以下、「指定業種」といいます)を営む企業に対して、③投資等を行う場合、財務大臣及び事業所管大臣あてに事前届出を行う必要があります。
①外国投資家について
対象者は、非居住者である個人、外国の会社、これらの者から50%以上出資を受けている日本の会社・ファンド等です。一例を挙げると、⽇本以外の国に居住する個人(⽇本国籍を有する者も含む)、外国で設立された法人やファンド、外国法人が50%以上出資する投資ファンド等、多岐にわたります。
②指定業種について
指定業種は、「告示」により定められています。指定業種の中でも、武器、航空機、原子力、宇宙、工作機械、半導体、電力など特に重要度が高い領域は「コア業種」とされ、他の指定業種に比べて、後述の「免除制度」の利用がより限定的です。投資対象企業が指定業種を1つでも営んでいれば、原則として届出の対象になります。
③投資等について
株式取得(原則として上場会社は1%以上、⾮上場会社は1株(端株も含む)以上)、外国投資家⼜はその関係者の取締役・監査役の就任への同意、指定業種に属する事業の譲渡や廃⽌の提案・同意等が挙げられます。
なお、一定の要件を満たす場合には事前届出の免除制度を利用できますが、上場・非上場の別、投資家の属性、その他の細かな要件を満たすかどうかなどによって、利用の可否が左右されます。さらに、コア業種が関係する場合は、免除制度の適用がより限定的になります。
また、届出の主体は「外国投資家」です。したがって、外国投資家が日本への投資を検討する際には、早い段階で規制対象となるかを確認することが欠かせません。
審査の流れと結果
届出後、財務大臣及び所管大臣が審査を行います。審査期間は原則として受理から30日以内ですが、必要に応じて最大5か月まで延長できます。ただし、実務上は審査が長期化するケースもあります。報道によれば、前述の台湾企業によるTOBでは、所管官庁がいったん届出の取り下げを求めて再提出させる運用がなされ、承認まで7か月もの期間を要しました。
審査の結果、問題がなければ投資を実行できます。他方、国の安全等を損なうおそれがある場合には、審議会への諮問を経て変更・中止の勧告がなされることがあります。勧告に従わない場合には命令が発出され得ます。さらに、この命令に違反した場合には株式売却等の措置命令が発出されることもあります。なお、これらの命令への違反には刑事罰が科される可能性もあります。
今後の動向―改正案と規制強化の方向性
2026年4月末現在国会で審議中の改正案では、事前審査の対象となる「外国投資者」や「投資行為」が拡大されています。また、本改正をもとに、米国のCFIUS(対米外国投資委員会)にならった「対日外国投資委員会(日本版CFIUS)」を設け、省庁横断の審査体制を強化することも構想されています(改正点については、後日別稿で概説する予定です)。
外為法をめぐる規制環境は変化が続いており、日本への投資を検討する外国投資家にとって、最新の規制動向を継続的に把握することが一層重要になっています。
(参考)
財務省「外国投資家による投資について-外為法に基づく対内直接投資審査制度-」(2026年4月30日取得,https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/20240913fdi_3.pdf)
財務省「令和6年度(2024年度)対内直接投資審査制度に関する年次報告書(アニュアルレポート)」(2026年4月30日取得,https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/annual_report2024.pdf)
経済産業省「対内直接投資審査制度について(外為法)」(2026年4月30日取得,https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushishinsaseido.pdf)


















