本コラムでは、2026年個人情報保護法の改正について3回にわたって紹介しています。最終回となる今回は、改正法の実効性を高めるために新たに導入された課徴金制度を取り上げます。併せて、改正法施行までの今後の政府の動きについても紹介します(なお、見出しの数字は前回(2)からの続き番号です)。 

 

二、改正法のポイント 

4.規律遵守の実効性確保 

課徴金制度の導入 

現行法では、個人情報保護法違反に対する、違反行為によって得た利益を剥奪する行政上の課徴金制度は設けられていませんでした。そのため、勧告や命令を受けた後に違反行為を中止した場合でも、違法に得た利益が保持される可能性がありました。 

そこで、違反行為による経済的誘因を除去し、悪質な違反行為を抑止するため、改正法では課徴金制度が創設されました。対象となるのは、深刻な個人の権利利益の侵害につながる可能性が高く、緊急命令の対象となっている重要な規制に違反する行為類型とされています。また、国内外において現実に発生しており、剥奪すべき違法な収益が想定できるものに限られます。具体的には、不適正利用、不正取得、違法な第三者提供、統計特例違反などが想定されています。 

さらに、課徴金納付命令の対象は、原則として大規模または重大な事案に限られます。例えば、課徴金対象行為に係る個人情報または個人データの対象者が1,000人以下の場合や、個人の権利利益を害する程度が大きくない場合として政令で定められる場合には、課徴金納付命令をすることができません。 

課徴金の額は、個人情報取扱事業者が、課徴金対象行為またはその行為をやめることの対価として得た金銭その他の財産上の利益に相当する額です。 

 

三、国会の附帯決議と施行に向けた今後の動き 

今回の改正では、多くの制度について、具体的な適用範囲や要件が政令、個人情報保護委員会規則、ガイドライン等に委ねられている部分が少なくありません。そのため国会では、改正法の適切な運用に向けて、衆参両院で附帯決議が採択されました。附帯決議では、制度の透明性・予見可能性の確保、AI開発・データ利活用と個人の権利利益保護との均衡、例外規定の慎重な運用、悪質事案に対する厳格な執行などが求められています。また、団体による差止請求・被害回復制度やプロファイリング規制など、今回の改正で見送られた課題についても、引き続き検討すべきとされています。 

今後は、政令・個人情報保護委員会規則の検討・公布、ガイドラインやQ&Aの改訂、課徴金制度を含む執行体制の整備が進められる予定です。統計作成等の特例についても、技術的な検討や事務局体制の整備が行われます。施行時期は、公布日である2026年7月17日から2年以内と規定されています。政府資料によれば、これらの準備を経て、2028年春頃から同年7月頃に施行される見込みです。 

 

四、おわりに 

これまで3回にわたってご紹介してきたように、今回の個人情報保護法改正は、AIの進展やデータ利活用の拡大を踏まえ個人情報保護制度を大きく見直すものです。企業においては、今後公表される政令、個人情報保護委員会規則、ガイドライン等を継続的に確認し、自社の個人情報保護体制やデータ利活用の運用を適宜見直すことが重要になります。 

 

(参考) 

個人情報保護委員会「令和8年改正個人情報保護法について」(2026年8月6日取得,https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/r8kaiseihogohou/ 

個人情報保護委員会「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」(2026年8月6日取得,https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260717_kaiseihounitsuite.pdf 

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律の一部を改正する法律の成立を受けた個人情報保護委員会の今後の取組について」(2026年8月6日取得,https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260731_kongonotorikumi.pdf 

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