「新卒一括採用」とは何か
「新卒一括採用」とは、企業が計画的・継続的に、卒業予定の学生等だけを対象にして募集・選考を行って内定を出し、卒業時に一斉に入社することを前提とする採用慣行を指します。日本では、この仕組みによって一般の労働市場とは別に「新卒者向け労働市場」が形成されています。
この慣行は、経験よりも将来性を評価する「ポテンシャル採用」の性質を有しており、長期雇用や企業内育成を前提とする日本型雇用システムと強く結びついてきました。その起源は戦前に遡ると言われていますが、本格的に普及したのは戦後の高度経済成長期(1955年~1973年頃まで)で、多くの企業が大量の人材を確保する必要があったことから慣行として定着したとされています。
新卒一括採用は、長年の慣行の積み重ねを通じて実施スケジュールや対象者に細かなルールが設けられ、日本独特の募集採用慣行として定着しています。その一方で、近年の社会情勢や労働市場の変化に伴い、転換期を迎えつつあります。
なお、新卒一括採用は高校卒業予定者にも行われていますが、本稿では大学・大学院卒業者に対象を絞ってご紹介します。
企業と学生にとってのメリット・デメリット
新卒一括採用には、学生と企業の双方にとって、以下のようなメリットがあります。
まず、大学生の就職希望者の多く(近年は9割以上)が卒業時に就職しているという実績につながっており、日本の若年層の失業率が諸外国より低く抑えられている要因の一つとされています。学生側にとっては、選考スケジュールやプロセスがある程度制度化されていることで、就職活動の見通しを立てやすく、応募機会の公平性が保たれやすいことも利点です。企業側にとっても、同時期に同条件・同待遇で多くの新入社員を確保でき、人件費管理がしやすく、研修や人員配置を効率化できるというメリットがあります。
一方で、デメリットも存在します。まず、企業・学生双方にとってのデメリットとして挙げられるのが「ミスマッチ」の発生です。画一的な選考による大量採用であるために、企業には自社が求める人物像とのミスマッチが生じやすいという課題があります。一方、学生側は勤務地や配属先を選べないことも多いため、それらが希望と異なる場合に、早期退職につながることがあります(俗に「配属ガチャ」と呼ばれています)。
加えて、新卒一括採用では就職状況が卒業時の景気に大きく左右されるという問題もあります。特に、バブル崩壊後の不況時(1993年~2004年頃)に卒業した「就職氷河期世代」は、他の年代に比べて就職が難しいという状況に直面しました。
さらに、長年にわたって新卒採用が重視されてきた結果、日本では中途採用市場が相対的に小規模でした。新卒で就職できなかった場合や早期退職した場合には、安定した職に就きにくいという問題も生じ、新卒時のチャンスを象徴する「新卒カード」という言葉も生まれました。現在では、このような不利益を緩和するために、卒業後3年以内であれば「新卒扱い」として応募できるようにすることが奨励されています。
新卒一括採用の現在の仕組みと近年の変化
大学生・大学院生は、複数の「就活サイト」と呼ばれるプラットフォームに登録し、これらを通じてインターンシップや選考にエントリーすることが一般的です。
新卒一括採用では、政府が就職・採用活動における「広報活動」、「採用選考活動」、「内定」の解禁スケジュール等を定めて、各企業に遵守を要請しています。しかし、政府の要請には強制力がないため、実際には多くの企業がスケジュールを前倒しし、要請された日程より前に説明会や選考を行ったり、内々定を出したりしています。
一方で、こうした従来型の仕組みは、現在転換期を迎えています。近年では、新卒一括採用を廃止して通年採用へ移行する企業が増えてきているほか中途採用で一般的な人材紹介業者(エージェント)を新卒採用に活用する動きも見られます。
50年以上続いてきた新卒一括採用の慣行が変化し始めている背景には、人材確保競争の激化、グローバル化の進展、デジタル化に伴うジョブ型採用の浸透など、日本の労働市場全体における様々な構造的な変化が存在しています。















