最高裁大法廷は、「法人が名誉の侵害または信用の損害において、その設立の目的や運営に重大な影響を受けた場合には、精神的苦痛を被っていないにもかかわらず、民法第195条第1項に基づき「相当な金額」の非財産的損害賠償を請求することができると認めました。本決定は、「法人は自然人とは異なり、精神的苦痛を被らないから、非財産的損害の金銭賠償を請求することができない」という長年の安定した実務見解を打破するものであり、その意義は大きいものです。
- 従来は、法人は非財産的損害を請求することは困難であるとの見解
台湾民法第195条第1項には、「他人の身体、健康、名誉、自由、信用、プライバシーもしくは貞操を不法に侵害し、または他人の人格の合法的権益を不法に侵害した場合で、状況に重大な影響を及ぼすときは、被害者は、財産上の損害を受けていなくとも、これに相当する金銭の賠償を請求することができる」と規定されています。過去には、学説上の見解、または実際の判決ともに、本条における「非財産的損害」を「精神的苦痛」とし、法人は精神的苦痛を被らないから、非財産的損害は請求できないとしてきました。
- 大法庭は法人も非財産的損害を請求することが可能と認定
民法195条1項に掲げる特別人格権の一部は、自然人、例えば生命、身体、健康、自由、肖像など、法人が客観的にこの種の権利を主張することは困難です。しかし、名誉や信用は自然人に属するだけでなく、法人も主張することができます。大法廷も、社会の発展により「非財産的損害」の範囲が日増しに拡大しているのに伴い、「精神的な苦痛」と同一の意義とする必要はなく、法人が人格権の侵害により受けた非財産的損害の金銭賠償を請求することが引き続き禁止されることのないように、従来の実務見解を調整すべきであるとしました。
- 法人が名譽や信用の非財産的損害賠償を請求するのには、一定の要件を満たす必要
(1) 法人の名誉と信用が確かに他人によって侵害されたこと。
(2) その侵害が当該法人の運営または設立目的に重大な影響を及ぼすこと。
(3) 損害の性質が明確に金銭的に定量化することができず、非財産的損害であること。
(4) 損害が存在する事実の立証責任が法人にあること。
- 大法庭決定の効果
大法廷制度の機能は法律意見を統一することにあり、大法廷は事件を審理し、法律意見を統一した上で書面による決定を出すが、この決定は原則として「裁判所から提出された案件」に拘束力があり、必ずしも他の訴訟に適用されるものではありません。しかし、裁判所組織法第51条の2第1項によれば、この決定は、最高裁判所民事法廷の「従前の判決」となり、最高裁判所の各審判廷が異なる見解を採用しようとする場合には、再度、大法廷に事件を提出する手続を行う必要があります。従って、この裁定は、最高裁判所内における水平的な拘束力を形成するとともに、審級制度を通じた垂直的な法律意見の統一を実現するものです。
- 実務的なアドバイス
今後、企業や法人がメディアやソーシャルメディア・プラットフォームなどによる悪質な誹謗中傷を受け、名誉や信用が重大かつ実質的に侵害された場合、民法195条1項の請求権に基づき損害賠償を請求することができます。但し、個々の事案においては、企業や法人に生じた「重大な影響」、例えば、重要な提携関係の中止、ブランド信頼度の明らかな低下、運営の停滞、製品の販売不振などの具体的な結果に特に留意し、企業または法人の権益を保護するために、訴訟での立証を強化する必要があります。













