台湾最高裁判所は、建設工事の請負人が民法第513条に基づき、未払工事代金を担保するため注文者に対して抵当権設定登記を請求した場合に、注文者が工事の瑕疵、施工不良、工期遅延等を理由として工事代金からの控除・相殺を主張できるかについて、意見照会(徴詢)手続を経て見解を統一しました(台湾最高裁判所2024年度台上字第1418号民事判決)。 

最高裁判所における大法廷制度上の意見照会(徴詢)手続とは、最高裁判所の裁判部(徴詢部)が個別事件を審理するに当たり、裁判の基礎となる法律上の見解について、評議の結果採用しようとする見解が最高裁判所の従前の裁判例と一致しない場合に、当該法律上の争点について、まず最高裁判所の他の各裁判部に意見を照会する手続です。他の各裁判部が当該見解を採用し、最高裁判所内の見解が一致した場合には、徴詢部は、受理した事件の裁判において当該法律上の見解を直接適用することができます。また、その裁判理由において意見照会手続の経緯および結論を明らかにすることにより、最高裁判所の従前の裁判上の見解が当該手続を経て変更されたことを対外的に示す仕組みとなっています。 

本件は、工場の新築工事に関する事案です。工事が完成し、建物について最初の所有権登記が完了した後、請負人は、未払工事代金が残っていたことから、民法第513条に基づき、注文者に対して当該建物への抵当権設定登記を請求しました。これに対し、注文者は、工事が全部完成していない上、施工不良や工期遅延等があったとして、補修費用や違約金等を工事代金から控除・相殺することができるため、請負人にはもはや担保すべき債権が存在しないと主張しました。 

最高裁判所は、請負人が民法第513条に基づき抵当権設定登記を請求する場合、裁判所は、請負契約が有効に成立・存続しているか等を審査すべきであり、抵当権によって担保される債権額は、契約締結時に確定した報酬額または登記請求時に未払となっている約定報酬額を上限とすると判断しました。他方、注文者が主張する工事の瑕疵、施工不良、補修費用、工期遅延に伴う違約金等の控除・相殺については、実際に支払うべき工事代金の額に関する争いであり、民法第513条に基づく抵当権設定登記請求の審理対象には含まれず、裁判所が当該手続において調査・判断する必要はないと判示しました。 

本判決は、請負人が迅速に抵当権の設定登記を行い、優先弁済を受ける順位を確保することに資するものです。台湾において工場、事務所その他の施設の建設工事を発注する企業にとっては、請負人との間で工事の瑕疵、工期遅延または違約金等をめぐる争いが存在する場合であっても、そのことのみを理由として請負人による抵当権設定登記を阻止できるとは限らない点に留意する必要があります。そのため、建設工事請負契約の締結に当たっては、検収、工事代金の支払、瑕疵への対応、債務不履行責任、違約金および担保権に関する条項をあらかじめ十分に検討することが重要です。 

弁護士等

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