台湾の最高法院民事大法庭は2026年6月、建物の無権原占有を巡る不当利得返還請求事件について、今後の実務の指針となる重要な統一見解(2022年度台上大字第932号裁定)を示しました。
【背景】建物の賃借人も土地の「占有人」にあたるか
他人の土地を無権原で占有している建物の所有者が、当該建物を第三者(賃借人等)に交付して使用させている場合、その実際の使用者に対して土地所有者が不当利得(土地賃料相当額)を請求できるか否か、実務上の見解が分かれていました。
今回の大法庭は、建物を現実に使用する者は、建物のみならず「その敷地坐落の土地に対しても事実上の管領力を有する」と認定し、原則として土地の占有人に該当するという判断を示しました。
【認定標準】「善意」と「悪意」による責任の分水嶺
ただし、不法占有の事実を知らずに建物を借りた賃借人の保護および取引安全の観点から、大法庭は以下の通り「善意・悪意」に基づく責任の範囲を明確に区分しました。
1. 善意の占有人(事情を知らない者):
台湾民法第952条に基づき、建物賃借人等には、当該建物が土地の占有権原を有しているか否かを調査する義務はなく、原則として「善意」と推定されます。したがって、土地所有者に対して土地の使用利益を返還する義務を負いません。
2. 悪意の占有人(事情を知っている者):
土地の占有権原がない事実を知りながら使用している場合は、土地所有者に対し、不当利得の規定に基づき土地の使用利益(賃料相当額)を返還する義務を負います。
【実務への影響】
本裁定により、土地所有者側は建物使用者に対する請求において「相手方の悪意」を立証する戦略が求められることになります。土地所有者の権利保護と賃貸市場の取引安全との均衡を図る重要判例として、今後の実務への影響が注目されます。














