議論が加速する「外国人と不動産」をめぐる課題
近年、日本では「外国人による不動産取得」をめぐる議論と関心が高まっています。
この問題において、まず論点として挙がるのが、現行制度では外国人による不動産取得・保有の実態が十分に把握できないという課題です。不動産登記には所有者の国籍記載がありません。また、一部の不動産における国籍情報は各省庁や自治体に分散しており、全体像をつかみにくい構造となっています。
実態が見えないことが国民の不安を招いているとして、政府はまず実態把握の基盤整備が不可欠だという認識を示しています。
2025年11月4日には「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が開催され、各閣僚に対する「内閣総理大臣指示」(以下、「指示」といいます)が公表されました。そのうち、不動産に関する指示は以下の4点です。
「指示」で示された4つの取組
一つ目の指示は、不動産取引における「国籍把握の仕組み」を整えるというものです。「不動産の移転登記時」及び「森林の取得の届出時」に国籍を把握することが示されています。これまでも一部の法令で国籍を把握する仕組みはありましたが、安全保障上重要な土地、一定面積以上の土地の取引、投資目的の不動産取得など、対象分野が分断されていました。今回の指示により、不動産分野全体で国籍情報をより包括的に収集する体制が整備されることになります。
二つ目の指示は、日本国外居住者による不動産取得の実態を把握するための仕組みを整備するというものです。現在は、国外居住者が投資目的で日本の不動産を取得する際などに、外為法に基づく報告が必要となっていますが、2026年4月からは居住目的を含む全ての不動産取得が報告対象となる予定です。
三つ目の指示は、国外からの取得を含めたマンションの取引実態を早急に把握するというものです。都市部ではマンションの価格上昇が続き、居住用住宅が国民に行き渡りにくくなる懸念が高まっています。そのため、マンション取引に関する実態の把握と公表を求めています。
四つ目の指示は、「不動産ベース・レジストリ」の整備です。現在、国・地方に分散している不動産関連情報を一元的に管理するための基盤整備が進められており、2027年以降の運用開始が予定されています。
今後見込まれる改正や議論の行方
「指示」では、2026年1月を目途に考え方や方向性を示すよう関係閣僚に求めています。2025年11月以降の関係大臣の記者会見などから、検討が着実に進んでいることが分かります。
なお、現時点では、日本には外国人による土地取得自体を直接規制する法律は存在せず、法令や自治体の条例に基づく届出制が中心となっています。しかし、現在の与党である自民党と日本維新の会の連立合意書には「令和8年(筆者注:2026年)通常国会で、外国人及び外国資本による土地取得規制を強化する法案を策定する。」と明記されています。実態把握が進むことで、今後は具体的な規制の内容や範囲についての議論が本格化していく可能性も考えられます。
本コラムでも、各制度の具体的な内容が固まり次第、より詳しい紹介を行っていく予定です。
(参考)
首相官邸「外国人との秩序ある共生社会の実現について(内閣総理大臣指示)(令和7年11月4日)」(2026年1月15日取得,https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kakuryokaigi/dai1/sorishiji.pdf)。














