呉詩敏 弁護士[1]  林子靖 弁護士[2]

原産地不適合をめぐる紛争には、請求権基礎の選択のほか、売主が上流の出荷の誤りを理由に帰責性を否定しうるか、原産地要件が契約内容となっているかといった問題も関わる。本稿は関連する裁判例を整理し、これに基づき、買主が契約起案及び履行に際して留意すべき四つの点と、この種の紛争に対応する前に確認しておくべき事項を示す。

なお検討を要する実務上の課題

前二回では、物の瑕疵担保責任(物之瑕疵擔保)と不完全給付(日本法の不完全履行に相当する)の相違、及び本件の第一審・第二審の判断の分岐を説明した。請求権基礎の選択のほか、原産地不適合をめぐる紛争には次の二つの問題もあり、いずれも注目に値する。[3]

(1) 上流の出荷の誤りを理由に帰責性を否定しうるか

台湾台北地方裁判所民事判決2024年度重訴字第740号は、国防部の「1/2トン偵察(指揮)車の委託整備」調達案件に関するものであり、契約総額は2億5,578万4,250台湾ドル、原産地が大陸地区である財物をもって供給してはならない旨が約定されていた。業者は、米国のサプライヤーから調達した純正部品を納入したが、その一部が税関当局の調査により大陸地区製品であることが判明し、一部は外装の「MADE IN CHINA」の表示が黒ペンで塗りつぶされていた。業者は、米国のサプライヤーが出荷の際に大陸地区製品を混入させたものであり自らは知らなかったと主張したが、裁判所は民法第224条により、米国のサプライヤーは部品の引渡しについて業者の代理人又は履行補助者に当たるとし、業者は「……なお自己の故意又は過失と同一の責任を負うべきである……」とした。国防部はこれに基づき契約を解約し、解約部分が契約金額に占める割合78.3%に応じて履行保証金939万6,000台湾ドルを没収したところ、裁判所はこれを相当と判断した。[4]

この見解によれば、売主が上流の出荷の誤りを理由に帰責性を否定することは容易には認められないと考えられる。もっとも、同判決は第一審判決であり、本稿執筆時点において上級審の公開裁判例は確認されていない。上級審により維持されるか否かは、なお推移を見守る必要がある。

(2) 原産地要件は契約内容となっているか

台湾高等裁判所台中分院民事判決2022年度上字第525号では、県政府が、記念品の原産地が大陸地区であり入札注意事項に違反するとして、検収を取り消し減額して受領した。裁判所は、入札注意事項の関連欄が未チェックであったのは手落ちによるものであり、かつ機関は当初から業者が大陸地区製品を提供することを知りながら落札させ、外装に「原産地:中国大陸」と表示することも承認していたことから、両当事者は契約締結時に大陸地区製品を禁止していなかったと認められ、業者に契約違反はないと判断した。[5]

同事件の事実は一見すると本件と異なるが、本件の第一審・第二審による附属契約の解釈を仔細に検討すれば、両者の争点は同一であることが分かる。すなわち、原産地要件が契約上の約定内容となっているか否かである。瑕疵担保を主張するにせよ不完全給付を主張するにせよ、買主はまずこの点について立証責任を負う。

契約起案・履行上の留意点

以上の分析によれば、買主が上流に対して原産地不適合の責任を問おうとする場合には、次の四点に留意すべきである。

  1. 請求権基礎を併せて主張すること。「瑕疵担保」と「不完全給付」とは異なる訴訟物であり、裁判所は当事者が主張する法律関係に即して法定の要件を充たすか否かを審査する。瑕疵担保のみを主張すれば、6か月の期間により不利な認定を受けやすい。併せて主張する方が周到である。[6]
  2. 告知の記録を保存すること。本シリーズで紹介した台湾高等裁判所民事確定判決2024年度上字第66号がサプライヤーの帰責性を認定した主たる根拠は、インテグレーターが大陸地区製部品を使用してはならない旨を繰り返し告知し、検収基準を送付した記録であった。この種の記録は契約締結及び履行の過程において適切に保存すべきであり、事後に証拠を補充することは著しく困難である。
  3. 受領後に自ら検査し通知すること。検査・通知義務が不完全給付の主張に影響するか否かについて実務上の見解が一致していない以上、買主は受領時に、自ら又は第三者に委託して主要部品の表示及び出所を確認すべきであり、最終発注機関の検収結果に全面的に依拠するのは適当でない。問題を発見したときは直ちに書面で売主に通知し、民法第365条所定の6か月の期間に留意すべきである。
  4. 原産地を「保証された品質」として約定すること。民法第360条によれば、売買の目的物が売主の保証した品質を欠くときは、買主は不履行による損害賠償を請求することができる。したがって、売主が製品及びその重要部品が大陸地区製でないことを保証する旨を契約に明記しておけば、買主は、売主に帰責事由があることを立証し難い場合でも、同条により賠償を請求する余地が残る。さらに、売主が故意に瑕疵を告げなかったときは、同条後段及び民法第365条第2項により、解除権及び代金減額請求権は6か月の期間の制限を受けない(ただし物の引渡しの時から5年の期間はなお適用される)。なお、第360条の損害賠償請求権が同じく第365条の除斥期間の拘束を受けるかについては条文上明らかでなく、実務は類推適用により処理しているため、主張は早期に行うのが望ましい。

対応前に確認しておくべき事項

次のいずれかに該当する場合には、対応に先立ち請求権基礎と期間の棚卸しを行うことが望ましい。

1.最終顧客から返品又は違約金賦課の通知を受けたが、民法第365条所定の6か月の期間をいつから起算すべきかが明らかでない場合。

2.上流の部材に問題を発見した時点で、納品から既に6か月を経過しており、なお他に主張しうる請求権基礎があるかを確認する必要がある場合。

3.受領時に外観の点検のみを行い、開梱検査をしていないため、受領した物を承認したものとみなされるおそれがある場合。

4.上流契約を起案中であり、原産地要件を民法第360条の「保証された品質」として約定しようとしているが、条項の文言をどのように定めるべきか明らかでない場合。

  1. 上流が、自社のサプライヤーの出荷の誤りであって自らとは無関係であると主張しており、この抗弁が実務上成り立つか否かを評価する必要がある場合。

結語

以上のとおり、原産地不適合をめぐる紛争は瑕疵担保と不完全給付の双方の規定に関わり、両者は要件、期間及び法律効果のいずれにおいても異なる。本件の第一審・第二審の結論の相違もここに由来する。買主としては、契約起案の段階で原産地要件を明記し、履行及び検収の過程で関係記録を保存して、後日の権利主張に備えるべきである。請求権基礎と期間の選択は、同一の損失を回収しうるか否かを左右することが多く、かつ個別事案の契約文言ややりとりの記録はそれぞれ異なるため、一概に論ずることはできない。

次回は、入札書類が性能又は効用に基づいて定められている場合に、履行がどの程度に至れば適合といえるかを検討する。政府調達法第26条第1項は入札書類を「機能又は効用に基づいて定めるべきである」と求めているところ、検収時に詳細仕様を項目ごとに照合する取扱いとの間の懸隔をどのように処理すべきかが問題となる。

[1] 呉詩敏弁護士は有澤法律事務所(Stellex Law Firm)のマネージング・パートナー。東呉大学法学修士、米国インディアナ大学インディアナポリス校法学修士。

[2] 林子靖弁護士は則誠法律事務所の代表弁護士。国立政治大学法律学際統合研究所修士、米国ジョージタウン大学ロースクール環境・エネルギー法学修士。

[3] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号(2025年10月29日)。サプライヤーの上告は、最高裁判所民事決定2026年度台上字第424号(2026年6月10日)により上告不適法として却下され、確定した。

[4] 台湾台北地方裁判所民事判決2024年度重訴字第740号(2025年7月24日)。

[5] 台湾高等裁判所台中分院民事判決2022年度上字第525号(2022年12月20日)。

[6] 本シリーズで紹介した台湾高等裁判所民事確定判決2024年度上字第66号の事案において、システムインテグレーターは第二審で民法第360条、第495条第1項、第227条第2項等の規定を訴訟物として追加し、原訴と選択的に併合している。これがこの種の対応の例である。

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