呉詩敏 弁護士[1]  林子靖 弁護士[2]

原産地条項をどのように定めるかは、実質的には、原産地リスクをサプライチェーン各層の当事者間でどのように分配するかという問題である。本稿は、第1回で紹介した事例を基礎として、上流サプライヤーが最終発注機関の検収基準に拘束されると裁判所が判断した理由を説明し、システムインテグレーター(買主)及びサプライヤー(売主)それぞれの立場から原産地条項の起案上の留意点を整理するとともに、契約締結前に確認すべき事項を示す。

最終発注規範の取込み

第1回で紹介した事例において、サプライヤーはシステムインテグレーターとの間で売買契約を締結したにすぎず、中科院との間に直接の契約関係はなかった。もっとも、第二審が原判決を取り消した重要な理由の一つは、両当事者(サプライヤーとインテグレーター)が2020年3月30日に別途締結した附属契約において、共同で受注した中科院の財務調達契約条項を「本附属契約において有効とみなす」と記載していた点にある。裁判所はこれに基づき、附属契約が中科院調達契約の内容を両当事者間の契約の一部とする旨を表示したものと認定し、サプライヤーが納品する製品も当然に中科院調達契約の関連規範に適合すべきものとした。[3][4]

この約定がなければ、サプライヤーは、自らはインテグレーターとの間で260万台湾ドルの売買契約を一本締結したにすぎず、中科院の検収基準に拘束されることに同意した事実はない、と主張しえたであろう。実務上、仕様書を電子メールでサプライヤーに転送する取扱いはよく見られるが、転送の記録は通常、サプライヤーが当該仕様を知っていたことを示すにとどまり、当該仕様に従って履行することに同意したことまでを証明するとは限らない。

契約起案上の留意点

(1) システムインテグレーター(買主)

上流サプライヤーと契約を締結する際には、次の四点に留意すべきである。

  1. 仕様書類を契約に取り込むこと。最終顧客の検収仕様表、原産地条項及び罰則規定を一式そのまま上流契約の附属書類とし、これに違反した場合は契約違反とみなす旨を明記すべきである。電子メールでの転送のみで済ませるのは適切でない。
  2. 「原産地」の範囲を明確に定義すること。少なくとも、製造地、組立地、重要部品の出所(モーター、電子スピードコントローラー、フライトコントロール基板、慣性計測ユニット、衛星測位モジュール、通信モジュール、カメラモジュール、バッテリーセル等)、回路設計の出所、ファームウェアの出所及び受託製造業者の特定を含めるべきである。あわせて、納品時に原産地を品目ごとに表示した部品表とメーカー発行の原産地証明の添付をサプライヤーに求め、変更がある場合には事前に書面による同意を得ることとし、信頼できるサプライチェーン認証の申請に必要な書類の提供に協力すべき旨を定めるのがよい。実務上、試作検査時と量産時とで部材が異なることは珍しくなく、部材変更の管理はとりわけ重要である。
  3. 賠償の範囲を明記すること。サプライヤーの賠償範囲として、買主が最終顧客から賦課された違約金、遅延違約金、解約による損失及び手直し費用を明記すべきである。「国防自主の強化及び無人ビークル産業の発展に関する条例」(強化國防自主暨無人載具產業發展條例)(以下「無人ビークル条例」という)の施行後は、上流の部材又は原産地書類の不実により買主が金額の追徴、過料又は調達資格の取消しを受けたことによる損失も、その範囲に含めるのが望ましい。本件のインテグレーターは民法の不完全給付に関する一般規定に基づいて賠償を請求し、三審を経てようやく確定に至っている。あらかじめ契約で定めておけば、訴訟上の争点を減らすことができたであろう。[5]
  4. 書面のやりとりの記録を保存し、可能な限り相手方からの返信による確認を得ておくこと。本件において裁判所がインテグレーターの主張を採用した主たる根拠は、証人の証言並びにメッセージアプリのグループでの会話及び電子メール等の記録であった。すなわち、インテグレーターの従業員が契約締結の前後を通じて中科院の合格基準表を繰り返し送付し、大陸地区製部品を使用してはならない旨を重ねて伝え、メーカー発行の原産地証明の提出を求めていたこと、サプライヤーの総経理も法廷において、インテグレーターから送付された画像及び基準表のファイルを受領した事実を認めたことである。

(2) サプライヤー(売主)

サプライヤーとしては、見積段階において、最終顧客が誰か、いかなる原産地基準が適用されるか、検収仕様はどのようなものかの三点をまず確認すべきである。

買主が最終仕様を提供しないまま「大陸地区製でないこと」を包括的に確約するよう求める場合には、サプライヤーは契約において確約の範囲を限定することができる。たとえば、納品時に添付する「部品表」記載の部材に限る旨を明記し、又は買主が仕様を提供しなかったことにより生じた不適合はサプライヤーの責めに帰すべきものではない旨を定めることが考えられる。国防調達・政府調達案件を受注する場合には、自らの上流サプライヤーに対しても同内容の原産地誓約書への署名と部材変更管理の遵守を求め、後日問題が生じた際に上流に求償できるようにしておくべきである。

さらに、無人ビークル条例第19条第2項によれば、資格審査、認証、調達、履行、検収等の手続において虚偽の資料を提供した者は100万台湾ドル以上500万台湾ドル以下の過料に処される。サプライヤーが原産地証明又は部品表を発行する際には、とりわけ慎重であるべきである。[6]

契約締結前に確認すべき事項

次のいずれかに該当する場合には、契約締結前に契約とサプライチェーンの棚卸しを行うことが望ましい。

  1. 最終顧客が軍、中科院その他の公的機関であり、自社が二次以下のサプライヤーである場合。
  2. 契約中に「有効とみなす」「準じて取り扱う」等、上流契約を取り込む文言があるが、上流契約の全文を確認していない場合。
  3. 製品にオープンソースのフライトコントローラー若しくはファームウェアを用い、又は国外から設計図の提供を受けた受託製造部品を用いている場合。
  4. 信頼できるサプライチェーン認証、租税優遇又は投資控除の申請を検討しているが、自社のビジネスモデルが無人ビークル条例第3条第6号の「無人ビークル業者」の定義に適合するか否かが明らかでない場合。
  5. 現行契約の賠償条項が「法律に従い賠償責任を負う」と記載するにとどまり、違約金転嫁の範囲を具体的に定めていない場合。

原産地条項をどのように定めるべきかは、業者のサプライチェーン上の位置、最終顧客の検収基準、及び現実にどの層のサプライヤーまで管理が及ぶかによって異なる。個別事情により結論は異なり、一概に論ずることはできない。

結語

第一回の事例からすれば、原産地リスクを契約により合理的に分配できるか否かは、最終発注規範が上流契約に確実に取り込まれているか、「原産地」の認定基準が明確であるか、関係するやりとりの書類が適切に保存されているかにかかっている。原産地要件の実現は、サプライチェーン各層の当事者がその範囲について共通の理解を持つことによって初めて可能となる。契約締結の当初に明確に定めておくことが、後日の紛争リスクを低減する鍵となる。

次回は、部材又は原産地書類に問題が判明した場合に、物の瑕疵担保責任(物之瑕疵擔保)と不完全給付(日本法の不完全履行に相当する)のいずれを主張すべきかを検討する。民法が物の瑕疵担保について定める6か月の除斥期間により、問題が発見される前に請求権が消滅してしまうことはないか。本件の第二審及び最高裁判所もこの点に言及している。

[1] 呉詩敏弁護士は有澤法律事務所(Stellex Law Firm)のマネージング・パートナー。東呉大学法学修士、米国インディアナ大学インディアナポリス校法学修士。

[2] 林子靖弁護士は則誠法律事務所の代表弁護士。国立政治大学法律学際統合研究所修士、米国ジョージタウン大学ロースクール環境・エネルギー法学修士。

[3] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号(2025年10月29日)。サプライヤーの上告は、最高裁判所民事決定2026年度台上字第424号(2026年6月10日)により上告不適法として却下され、確定した。

[4] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号参照。

[5] 台湾民法第227条第1項は、債務者の責めに帰すべき事由により不完全な給付がされたときは、債権者は履行遅滞又は給付不能に関する規定に従いその権利を行使することができる旨を定める。同法第226条第1項、第256条も参照。

[6] 無人ビークル条例第19条第2項。

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