呉詩敏 弁護士[1]  林子靖 弁護士[2]

「国防自主の強化及び無人ビークル産業の発展に関する条例」(強化國防自主暨無人載具產業發展條例)は、第4条を除き2027年3月11日から施行される。同条例は「設計」を国産化比率の計算に取り込み、出所が不実であり又は高リスクの出所に係る重要部品・ソフトウェア・ファームウェアを使用した者について、資格の取消し、交付済金額の追徴及び過料を定めている。本稿は、同条例のうち原産地責任に関わる規定を整理し、第1回で紹介した事例と対照しながら、条例施行後の原産地紛争が、契約当事者間の民事責任に加えてどのような行政上の責任を生じうるかを説明する。

条例の背景

第1回で紹介した事例では、無人機のモーター及びフライトコントロールモジュールの基板の原産地が調達規範に適合しなかったため、サプライヤーの代金請求は棄却され、システムインテグレーターに対し129万6,306台湾ドルを賠償すべきものとされた。同事件は、契約当事者間の民事責任のみに関わるものであった。[3]

総統は2026年9月11日に「国防自主の強化及び無人ビークル産業の発展に関する条例」(強化國防自主暨無人載具產業發展條例)(以下「無人ビークル条例」という)を制定公布した。予算条項である第4条が公布後直ちに施行されたほかは、残りの条文は2027年3月11日から施行される。条例の施行後は、原産地紛争が行政上の過料及び調達資格の取消しにまで及びうるのであって、もはや契約当事者間の民事賠償の問題にとどまらない。

条例のうち原産地責任に関わる規定

(1) 国産化比率とサプライチェーン要件

無人ビークル条例は、「国産化比率」(國產化比例)を、無人ビークルの設計・製造・組立て及び重要部品の供給の過程において国内業者に由来する産出額の比率と定義している。そのうえで、公的部門の契約において、大陸(香港・マカオを含む)地区の業者の参加を禁止すること、及び調達執行チームの構成員が大陸・香港・マカオ籍の者であってはならないことを明記すべきものとし、さらに信頼できるサプライチェーン等級認証制度(可信任供應鏈分級認證制度)を整備すべきものとしている。

第1回の事例と対照すると、中科院は部品ごとに原産地を審査し、回路設計の出所まで追及していた。条例は「設計」を国産化比率の計算範囲に取り込み、第19条も「ソフトウェア、ファームウェア」を重要部品と並列させており、両者の方向性は一致している。換言すれば、従来は個別の調達規範に散在していた審査基準が、条例の施行により明確な法的根拠を得たということである。

(2) 第19条の罰則

無人ビークル条例第19条第1項によれば、未認証、出所不実、高リスクの出所に属し、又は高リスクの出所により実質的に支配される重要部品・ソフトウェア・ファームウェア・システム・役務を使用して、同条例所定の奨励・補助・投資・融資・信用保証又は政府調達への参加資格を取得した者は、その資格を取り消し又は廃止するほか、受領済みの金額を追徴し、受領済金額の一倍以上三倍以下の過料に処するものとされる。同条はさらに次のとおり定める。[4]

  1. 資格審査、認証、調達、履行、検収、補助、奨励、投資、融資又は信用保証の手続において虚偽の資料を提供した者は、100万台湾ドル以上500万台湾ドル以下の過料に処する。
  2. 主管機関、発注機関又は受託専門機関が法に基づき行う査察、検測、抜取検査又は再検査を回避し、妨害し、又は拒否した者は、50万台湾ドル以上300万台湾ドル以下の過料に処し、かつ、違反回数ごとに処罰することができる。
  3. 第4項は、前3項の行為が刑事責任に関わる場合には検察機関に移送して捜査させるべき旨を定める。[5]

なお、第1回の事例の事実は2020年に生じたものであり、当時無人ビークル条例は存在しなかった。しかし、同様の事態が条例施行後に生じ、かつ前記の奨励・補助又は政府調達資格に関わる場合には、業者が直面するのは違約金及び損害賠償にとどまらず、資格の取消し、金額の追徴及び過料にまで及びうる。提出した原産地証明や部品表に不実があれば、虚偽資料提供の罰則も別途問題となる。

(3) 信頼できるサプライチェーン認証制度

等級認証制度は二元的な設計を採る。軍用無人ビークルシステム、軍需品及び重要部品の認証は国防部が所管し、商業用・公共サービス用その他非軍用の無人ビークルシステムの認証は経済部が所管する。また、重複した検測を避けるため、同一規格・同一アーキテクチャのシリーズ製品に関する検測メカニズムを認証制度に組み込むべきものとされている。[6]

時期については、主管機関は条例の公布施行後六か月以内に等級認証制度の整備を完了すべきものとされ、国防部は信頼できるサプライチェーン及び重要部品の認証リストを毎月更新すべきものとされている。業者としては、自社の部材の出所を早期に棚卸しし、準備を進めておくことが望ましい。[7][8]

(4) 「無人ビークル業者」の定義

無人ビークル条例は「無人ビークル業者」について定義を置き、「純粋な代理、純粋な輸入、純粋な組立て、転売又は単に政府入札案件を請け負うことを主たる業務とする者を含まない」と明記している。したがって、業者のビジネスモデル自体が、信頼できるサプライチェーン認証の申請資格、及び租税優遇・投資控除の申請資格の有無を左右することになる。この産業への参入又は転換を検討する者は、まず自社の事業内容の性質決定を行うべきである。[9] [10]

(5) 租税優遇の排除

無人ビークル条例第22条によれば、無人ビークル業者が直近三年内に国家安全、環境保護、労働、サイバーセキュリティ又は航空安全に関する法律に違反し、その情状が重大であると各中央目的事業主管機関により認定された場合には、第21条の規定による租税優遇を申請することができず、かつ、違反行為の属する年度に取得した租税優遇は停止・追徴される。財政部は、処分が確定した後、当該業者の名称をウェブサイト上で公表すべきものとされている。[11]

環境保護、労働、サイバーセキュリティ等の事項は、従来から企業のサステナビリティガバナンスの関心領域であった。条例がこれらを租税優遇の資格と結び付けた点も、業者としては留意すべきところである。なお、原産地の問題は、輸出管理や国際市場における調達制限にも関わりうる。

結語

以上を踏まえると、無人ビークル条例の施行後は、政府調達及び奨励・補助に関わる場合、部材・設計・ファームウェアの出所に関する要件が明確な法的根拠を得ることとなり、原産地紛争の効果も、契約当事者間の民事責任から行政上の過料及び資格の取消しへと拡張される。契約によって事後の金銭賠償を約定することはできるが、資格の取消しや業者名の公表により生ずる信用上の損失は、賠償のみで回復することは難しい。業者としては、やはり部材の出所を事前に管理することを基本とすべきである。

次回は、前記の原産地要件を、契約条項によってシステムインテグレーターと上流サプライヤーとの間でいかに合理的に分配すべきかを検討する。

[1] 呉詩敏弁護士は有澤法律事務所(Stellex Law Firm)のマネージング・パートナー。東呉大学法学修士、米国インディアナ大学インディアナポリス校法学修士。

[2] 林子靖弁護士は則誠法律事務所の代表弁護士。国立政治大学法律学際統合研究所修士、米国ジョージタウン大学ロースクール環境・エネルギー法学修士。

[3] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号(2025年10月29日)。サプライヤーの上告は、最高裁判所民事決定2026年度台上字第424号(2026年6月10日)により上告不適法として却下され、確定した。

[4] 無人ビークル条例第19条第1項「未認証、出所不実、高リスクの出所に属し、又は高リスクの出所により実質的に支配される重要部品、ソフトウェア、ファームウェア、システム又は役務を使用して、本条例所定の奨励、補助、投資、融資、信用保証又は政府調達への参加資格を取得した者は、その資格を取り消し又は廃止するほか、受領済みの金額を追徴し、かつ受領済みの金額の一倍以上三倍以下の過料に処する。」

[5] 無人ビークル条例第19条第2項ないし第4項。

[6] 無人ビークル条例第13条第2項、第3項。

[7] 無人ビークル条例第20条第2項。

[8] 無人ビークル条例第17条第4項。

[9] 無人ビークル条例第3条第6号。

[10] 無人ビークル条例第9条、第21条。

[11] 無人ビークル条例第22条。

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