呉詩敏 弁護士[1]  林子靖 弁護士[2]

発注機関の原産地要件を、システムインテグレーターを経て上流の部品サプライヤーにまでどのように行き渡らせるかは、実務上しばしば争いとなる。本稿は、台湾高等裁判所民事確定判決2024年度上字第66号を素材として、発注機関が部品の出所をどのように審査したか、「台湾で製造されたが設計が大陸地区(中国大陸)に由来する」回路基板について裁判所がいかなる判断を示したかを整理し、あわせて原産地リスクの典型的な三つの類型を示すものである。

無人機調達における原産地要件

近年、国防調達及び政府調達においては、調達対象物が「大陸地区製でないこと」を求める要請が一段と厳しくなっている。無人機は軍用・民生用の双方の性質を併せ持つため、その影響はとりわけ顕著である。無人機に用いられる部品は多岐にわたり、モーター、電子スピードコントローラー、フライトコントロール基板、慣性計測ユニット、衛星測位モジュール、映像伝送モジュール、バッテリーセル、カメラモジュール等、それぞれ出所を異にしうる。そのため、「原産地要件」が完成機の組立地にのみ及ぶのか、各重要部品にまで及ぶのか、さらに回路設計の出所にまで及ぶのかが、履行上の重要な問題となる。

多層のサプライチェーンにおいて、発注機関の原産地要件はシステムインテグレーターを介して上流サプライヤーへと伝達される。各層の当事者が「大陸地区製でないこと」の範囲について異なる理解をしていれば、紛争はそこから生じうる。以下の事例はその典型である。

事例の分析

(1) 事実

システムインテグレーターは、国家中山科学研究院(以下「中科院」という)の「高精度光学測位システム等三項目」調達案件を落札し、上流サプライヤーから屋内用無人機及び地上管制局を税込代金260万台湾ドルで購入した。インテグレーターは2019年1月の見積依頼の時点から、大陸地区製部品を使用してはならない旨を繰り返しサプライヤーに伝えており、中科院も2020年1月にサプライヤーを訪問した際、大陸地区製部品の使用禁止を改めて強調していた。

サプライヤーが2020年2月に納品した後、中科院はまず、部材にメーカー名・型番の表示がなく、メーカー発行の原産地証明も提出されていないことを理由に返品した。是正のうえ再納品されたが、今度は、無人機のモーターが大陸地区製部品であること、フライトコントロールモジュールの基板が大陸地区製部品であること、及びフライトコントローラーの性能試験が不合格であったことを理由に再び返品された。契約上許容される是正回数に達したため、中科院は当該部分につき契約を解除し、インテグレーターに対し懲罰的違約金95万3,166台湾ドル及び遅延違約金34万3,140台湾ドル、合計129万6,306台湾ドルを賦課した。

そこでインテグレーターは代金の支払を拒絶し、サプライヤーが本訴として260万台湾ドルの支払を求め、インテグレーターは反訴として前記違約金相当額の賠償を求めた。第一審はサプライヤーの請求を認容したが、第二審はこれを取り消し、インテグレーターに代金支払義務はなく、サプライヤーがインテグレーターに対し129万6,306台湾ドル及び利息を支払うべき旨を判示した。サプライヤーの上告は最高裁判所により上告不適法として却下され、本件は確定した。2020年2月の納品から確定までに、6年4か月を要している。[3][4]

(2) 検討

本件における原産地の認定について、注目すべき事実が二点ある。

第一に、中科院は二度目の返品の際、無人機モーターの筐体に「MIC」の表示があることを発見している。中科院の助理研究員は法廷において、中科院は軍備局の関連規定に従い大陸地区ブランドの部品の使用を禁じており、部品、IC、センサーはいずれも大陸地区製であってはならず、無人機のフライトコントロールモジュール及びモーターはいずれも部品に当たる旨証言した。ここから、発注機関は部品ごとにその出所を審査しているのであって、完成機の組立地を認定基準としているのではないことが分かる。

第二に、サプライヤーは、フライトコントロールモジュールの基板はオープンソースのサイトからPixhackフライトコントロール基板の図面データをダウンロードし、一部を修正したうえで台湾のメーカーに製造を委託したものであるから大陸地区製部品ではない、と抗弁した。台湾の受託製造業者も、サプライヤーのためにプリント基板を製造したこと、回路図はサプライヤーから提供されたことを書面で裁判所に回答している。裁判所がこの種の回路基板の受入れの可否を書面で中科院に照会したところ、中科院は、Pixhackの図面データが大陸地区に由来するものであれば受入れはできない、また、フライトコントロール基板が照会のような方法で製造されたか否かにかかわらず、当該調達案件では目的物(ハードディスク及び部品を含む)の原産地が大陸地区であってはならないと約定されている以上、いずれにせよ受け入れることはできない旨回答した。中科院はさらに大陸地区メーカーのカスタマーサービスに確認し、当該フライトコントロールモジュールに用いられた型番の基板がいずれも同社の製品版型であることを確認している。そこで裁判所は、サプライヤーが台湾のメーカーにフライトコントロールモジュール基板の製造を委託していたとしても、その設計は依然として大陸地区のメーカーに由来しており、中科院の受入基準に適合しないと認定した。以上からすれば、回路基板が台湾で製造されたことは、その設計の出所も台湾であることを当然には意味しない。図面データをオープンソースのサイトから取得したことも、発注機関によるその出所の認定を左右しない。[5]

もっとも、本件の検収基準は当初から変わっていない。紛争の根源は、サプライヤーによる「非大陸地区製」の理解が発注機関と異なっていたことにあり、発注機関が履行の過程で基準を引き上げたわけではない、という点である。

「原産地ロンダリング」の典型的な類型

本件の事実を総合すると、原産地の問題は概ね次の三類型に整理できる。

  1. 部材の出所を証明できない。本件の一度目の返品理由は、部材が大陸地区製であると判明したことではなく、部材にメーカー名・型番の表示がなく、メーカー発行の原産地証明も提出できなかったことであった。国防調達・政府調達の実務では、通常、供給側が部材の出所を証明する責任を負う。業者は、発注機関に問題を指摘されるのを待つのではなく、自ら関係書類を整えておくべきである。出所を証明できなければ、検収では受け入れられない。
  2. 重要部品が大陸地区に由来する。完成機を台湾で組み立て、台湾ブランドとして出荷しながら、電子スピードコントローラー、慣性計測ユニット、衛星測位モジュール、映像伝送モジュール、バッテリーセル、カメラモジュールの一部が依然として大陸地区に由来する、という例は業界では珍しくない。発注機関が部品ごとに出所を審査する以上、完成機の組立地のみで原産地を判断することはできない。
  3. 設計の図面データが大陸地区に由来する。本件のフライトコントロールモジュールの基板がこれに当たる。回路基板が台湾で製造されていても、その設計が大陸地区のメーカーに由来するのであれば、調達規範に適合しないと認定される可能性がある。

結語

本件からは、原産地要件の審査範囲が完成機の製造地・組立地にとどまらず、重要部品に及び、さらに回路設計の出所にまで及ぶことが分かる。サプライチェーンのレジリエンスとガバナンスを重視する企業にとって、原産地の確認は一通の誓約書にとどめるべきではなく、部品・設計・ファームウェアにまで遡及できる文書記録を整備すべきである。本件のサプライヤーは6年4か月にわたる訴訟を経て、代金請求を棄却されたうえ違約金の賠償を命じられた。これは、事前に原産地の範囲を明確にしておくことの重要性を示すものといえる。

次回は、2027年3月11日から施行される「国防自主の強化及び無人ビークル産業の発展に関する条例」(強化國防自主暨無人載具產業發展條例)が、原産地紛争の法的効果にどのような影響を及ぼすかを検討する。なお、サプライヤーがなぜ中科院の検収基準に拘束されるのかという点は、契約条項を扱う第三回で述べる。

[1] 呉詩敏弁護士は有澤法律事務所(Stellex Law Firm)のマネージング・パートナー。東呉大学法学修士、米国インディアナ大学インディアナポリス校法学修士。

[2] 林子靖弁護士は則誠法律事務所の代表弁護士。国立政治大学法律学際統合研究所修士、米国ジョージタウン大学ロースクール環境・エネルギー法学修士。

[3] 台湾桃園地方裁判所民事判決2021年度訴字第608号(2023年5月12日)。

[4] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号(2025年10月29日)。サプライヤーの上告は、最高裁判所民事決定2026年度台上字第424号(2026年6月10日)により上告不適法として却下され、確定した。

[5] 台湾高等裁判所民事判決2024年度上字第66号参照。

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