現在、日本の金融庁および東京証券取引所において、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)の改訂作業が進められています。2021年以来、約5年ぶりとなる今回の改訂は、上場企業のコーポレートガバナンスの実質化を促す重要な内容を含んでいます。本稿では、現在公表されている改訂案の主要なポイントをご紹介します。 

 

1. CGコードの概要と改訂の背景 

CGコードは、企業の「稼ぐ力」や「攻めのガバナンス」の強化を目的として、上場企業を対象に、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものです(CGコードの概要については、本コラムの以前の記事(「日本における『コーポレートガバナンス・コード』の概説」)もご参照ください)。 

2015年に導入され、これまで2018年・2021年の2回にわたり改訂が行われてきました。導入から10年が経過し、原則の数の多さや、企業の対応が形式的なものにとどまるケースも指摘される中、3度目の改訂作業が進められています。 

 

2. 改訂案の主要なポイント 

(1) 構造整理によるプリンシプル化・スリム化 

現行(2021年改訂版)のCGコードは、「基本原則」「原則」「補充原則」の三層構造で、合計83項目で構成されています。今回の改訂案では、「基本原則」「原則」の二層構造、30項目にスリム化されたほか、具体的な内容や趣旨・背景を記載した「解釈指針」が新設されています。 

スリム化の背景には、「プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)」および「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守か説明か)」というCGコードの本来の趣旨への回帰があります。単なる項目数の削減にとどまらず、各上場企業が自社の状況に応じて実質的な対応を行うよう促すことを目的としています。 

 

(2) 成長投資の促進 

今回の改訂案では、取締役会の役割・責務として、現預金や不動産を含む経営資源を成長投資等に有効活用できているかを含め、経営戦略や経営計画に照らした経営資源配分の適切性について不断に検証を行うべきである旨が定められました。 

この改訂により、今後、企業が保有する現預金や不動産などの活用について、アクティビスト株主(いわゆる「物言う株主」)を含む株主からの関心がより一層高まる可能性があります。 

 

(3) 取締役会の機能強化 

今回の改訂案では、上場企業の取締役会の機能強化に向けた取組みは引き続き重要である旨が強調されました。具体的には、独立社外取締役(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役)について、その導入は進んでいるものの、さらなる実効性向上に向け、独立社外取締役の役割・責務、質・量の確保、独立性確保が重要であるとされています。また、取締役を支援する重要な役割を果たす事務局の機能強化を推進すべき旨も追記されました。 

 

(4) 有価証券報告書の定時株主総会前の開示 

今回の改訂案では、有価証券報告書を定時株主総会前(可能であれば開催日の3週間以上前)に提出することが、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として記載されました。 

なお、政府は企業負担も考慮しつつ、有価証券報告書と事業報告等の一本化、記載事項の整理などの制度的な検討も並行して進めるとしています。 

 

3. 今後の日程 

改訂は2026年7月を目途に実施される予定であり、上場企業は、遅くとも2027年7月までに、改訂コードに関する事項について記載したコーポレートガバナンス報告書を提出するよう求められる予定です。なお、具体的な提出時期については東京証券取引所において検討されます。 

 

4. おわりに 

以上のとおり、今回の改訂は、CGコードへの形式的な対応から、コーポレートガバナンスの実質化への転換を促すものといえます。今後は、経営資源の配分や成長投資に関する取締役会の判断の妥当性に加え、それらに関する情報開示・説明責任などが、これまで以上に問われることになると考えられます。 

 

(参考) 

金融庁「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(改訂案)」(2026年611日取得,https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260410/01.pdf 

金融庁「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」(2026年611日取得,https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260410/03.pdf 

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